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ロサンゼルス視察

こんにちは、ディレクターの畔柳です。

暦の上では秋ですが、今年はなかなか夏が終わらないような暑さが続いています。去年もそんな事を思っていたような気もします。それでも季節は確実に移ろい、「スポーツの秋」という言葉を耳にすると、やはり体を動かしたり観戦したくなる気分になります。

弊社では一昨年からスポーツ施設のブランディングや広報デザインに関わる機会が増えてきました。そこで今回、スポーツビジネスの本場の空気を体感し、今後のクリエイティブに活かすべく、ロサンゼルスのドジャースタジアムに視察に行ってきました。個人的には「視察半分、もう半分は大谷翔平選手や山本由伸選手のプレーをどうしてもこの目で見たい」という思いもあり、代表を焚き付けて実現したプロジェクトです。

大谷選手の打席は特に大きな声援

3泊の滞在でみっちり3試合を観戦することができました。
1日目は三塁側内野席からナイターを。ネットの張り方が工夫されていて視界を遮る柱がなく、グラウンドレベルに近い席だったため、臨場感に圧倒されました。大谷選手の犠牲フライ未遂の当たりがありましたが、キケ選手がなぜか本塁にスライディングせずタッチアウト。
0-4でダイヤモンドバックスの勝利。

ドジャースタジアム レフト側席からの眺め

2日目はレフト側外野席、いわゆるホームラン席のすぐ後ろで観戦しました。ドジャースタジアムはフェンスが低いため、まるで自分が外野を守っているような感覚で試合を楽しむことができます。こちらも接戦の末に敗戦でしたが、観客の熱量と外野席ならではの一体感は格別でした。知らぬ間にディレクター木下が現地の人と肩を組んで歌っているほどでした。試合は1-3でダイヤモンドバックスの勝利。

力投する山本由伸投手

3日目はキケ・ヘルナンデス選手のバブルヘッドのプレゼントデイでした。こんなの物もらえたら他の選手のバブルヘッドも集めたくなるなあと思いつつ、、この日はバックネット裏(3塁側寄り)の4階席からデイゲームを観戦。球場全体を俯瞰できるだけでなく、日陰のある快適な場所で試合を楽しむことができました。この日は山本投手が先発し、7回を投げて1失点10奪三振という圧巻のピッチング。(この次の登板時にはノーヒットノーラン未遂の快投!)途中で追いつかれる展開もありましたが、最後はウィル・スミス選手の代打サヨナラホームランで劇的な勝利。球場の盛り上がりを全身で感じられる、最高の締めくくりとなりました。

キケ選手のファン(おそらく同郷プエルトリコ出身)

3試合を通して、日本とアメリカの応援スタイルの違いも強く印象に残りました。日本では応援団の鳴り物が主流ですが、アメリカでは一切なく、観客は思い思いに声を上げながらも、投手がモーションに入る瞬間には静まり返ります。守備の正確さや凡退時でも全力疾走する姿勢、データを駆使してポジショニングを変える様子(野手が頻繁にカンニングペーパーを確認していたのが印象的でした)など、プレーの質の違いも肌で感じることができました。

また、BSチャンネル番組「球辞苑」で秋山翔吾選手が話していたのですが、メジャーの球場は設計段階から「観客体験」を意識しており、本塁から二塁を結ぶ線が東北東を向くよう定められているそうです。夕方の西日が打者や観客の視界を妨げないようにするための配慮で、実際に私がナイターを観戦した時間帯も、確かに見にくさを感じることは無く、球場そのものが「観客にとって快適で心地よい体験を第一に考え抜かれた設計」であることを実感しました。

そして7回終了時に観客全員で歌う「Take me Out to the Ball Game(私を野球に連れてって)」の光景は、まさにアメリカの野球文化を象徴する瞬間でした。

24時間利用可能なラウンジ

ラウンジから続くバルコニー

朝8時頃の光

球場以外にも、滞在中はリサーチも兼ねていくつかの美術館やホテル、ショップを訪れました。宿泊先はダウンタウンのソンダーbyマリオットボンヴォイ・ザ・ウィンフィールドアパートメント ダウンタウン LA(Sonder The Winfield Apartments Downtown LA)。Sonderは今年6月にMarriott Bonvoyに統合されたブランドで、長期滞在を意識したアパートメント型ホテルです。ラウンジは24時間利用可能で、コーヒーや紅茶も無料で、自由に楽しめる空間でした。

室内はシンプルで洗練されたデザインが印象的で、バスアメニティにはデンマーク・コペンハーゲン発のライフスタイルブランド FRAMA が採用されていました。個人的にはバスアメニティが良いとホテルでの体験がぐっと良くなる感覚があります。否が応でも直接手に触れるものであり、特に香りが記憶に強く影響するからだと思っています。これから私はどこかでFRAMAのことを見たり、似た香りに出会ったらSonderやドジャースタジアムのことを思い出すことでしょう・・・(多分)

ロサンゼルス・カウンティ美術館では、建築そのものも印象に残りました。設計はレンゾ・ピアノで、彼はパリのポンピドゥー・センターを手がけた建築家としても知られています。外にむき出しになった階段や、要所に使われた赤いアクセントがどこかポンピドゥーを思わせ、確かに同じ系譜にあることを感じさせるデザインでした。

J・ポール・ゲティ美術館にも行きました。ロサンゼルスを見下ろす丘の上に建てられた壮大な美術館で、設計はリチャード・マイヤーです。白いトラヴァーチン大理石とガラスを組み合わせた建築は、光を受けてどんどん表情を変え、立地の素晴らしさと相まって圧倒的なスケール感を放っていました。展示空間だけでなく、庭園やテラスから眺める景色も一つの作品のようでした。さらに驚くのは入館料が無料だということ。石油で財を成した資産家J・ポール・ゲティが築いた財団によって運営されており、文化への惜しみない投資がこうした体験を可能にしているのだと感じました。

品定めする代表中尾

最終日には、空港近くイングルウッドにある Berbere Imports を訪れました。40年以上続く老舗のインポートショップで、広大な倉庫には世界中から集められた家具や装飾品がずらりと並んでいます。映画やドラマのセット用に貸し出されることも多いそうで、スケール感と多様さは圧巻。古びた扉やアイアン装飾から大型ソファまで、どれも存在感が強く、空間のデザインを一変させる力を感じました。

次回は、「グリーンモンスター」と呼ばれる外野フェンスのあるボストンのフェンウェイ・パークで試合を見つつ、ニューバランスのボストン本社工場に見学に行きたい、というのが個人的な野望です。さらにはMLBだけでなく、NBAやスーパーボウルといったアメリカを代表するスポーツイベントも体感し、クリエイティブの視点から人を惹きつける仕組みを深掘りできればいいなと思っています。



畔柳